sticky vision Ltd. | バナナとデザインの違い:サービス業の「理想の価格設定」とは?
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バナナとデザインの違い:サービス業の「理想の価格設定」とは?

 

私を含めて、いわゆる「サービス業」を行っている人たちの共通の悩みとして、「サービスの値段を決めるのが難しい」というものがあります。

「値段を上げるとお客さんが減ってしまうかもしれない。でも、これ以上値段を下げると、赤字になってしまう・・・」

そんな悩みを抱えながら、お客さんからの値引きの依頼や、値段以上のことを次々と要求してくるお客さんに、日々対応しているサービス提供者は少なくありません。

このような悩みがなかなか無くならない一つの要因が、大量販売される「モノ」と、個別対応を前提とした「サービス」では、値段の決まり方がまったく異なることが、実はあまり理解されていないことです。

「バナナ」と「ウェブサイトデザイン」を例に挙げて、詳しく見てみましょう。

 

モノは「ボリューム」で値段を決める

スーパーに陳列されている「一房199円」のバナナを想像してみてください。

このバナナがあなたの買い物カゴに入るまでにかかった「コスト」は、トータルでどのくらいでしょうか?

フィリピンの農家が育てたバナナを業者が買い取り、船で日本まで運び、港から包装工場まで運び、包装した後で仲買業者に卸し、小売業者が買い取って販売店に運び、陳列する・・・

 

当然ですが、これらのすべての「コスト」が、あなたが買う一房でカバーできるわけがありません。

同時に何万房、何十万房というバナナを取り扱うからこそ、これらのコストを回収して、利益を出すことができます。

 

そして、大量に扱われているがゆえに、一つ一つのバナナにはほとんど違いがありません。

たとえ他の人が買い物カゴに入れているバナナが、あなたが選んだバナナより大きく見えたとしても、それらがある一定範囲のサイズ(重さ)を満たした「規格品」であることに変わりはないのです。

また、バナナを買う目的も「食べる」という一点で共通しています。(もし他の理由でバナナを買うという人がいらっしゃったら、ぜひ教えてください)

 

つまり、大量販売される「モノ」は、共通の目的を果たす規格品を広く流通させるという前提のもとに、取り扱うボリュームに応じて値段が決められているのです。

 

サービスは「クオリティ」で値段を決める

一方で、あなたのビジネスの「ウェブサイト」を制作することを想像してみてください。

お友達が紹介してくれた無料ホームページ制作サイトで、自分で作ろうとはしてみたものの、あたかも90年代後半の代物であるかのような冴えない見た目のホームページしか作れなかったあなたは、ウェブサイトのデザインを請け負う業者に依頼しました。

その業者の担当者は、あなたからビジネスの内容やウェブサイトを作る目的などをヒアリングし、あなたのオフィスやお店の写真を撮り(あるいは外部のカメラマンに撮ってもらい)、

あなたのビジネスの価値を正しく伝えられるような文章をつくり、ウェブサイトを訪問した人が必要な情報をすぐに得られるようなレイアウトを考えて、ウェブサイトを作ります。

 

さらに、本当に価値のあるウェブサイトを作るには、他にもやるべきことがあります。

どのような写真やレイアウトを使うのが、より訪問した人の興味や注意を引きつけるのかを調べる「A/Bテスト」を行ったり、

日本でのインターネット・トラフィックの約半分を占めるスマートフォンでのウェブサイト表示を適正なものにする「レスポンシブ対応」を行うことなどで、よりクオリティの高いウェブサイトになります。

 

このようなウェブサイト制作における「コスト」の内容は、おもに何でしょうか?

デザイン業者の担当者の「人件費」? その通りです。価値を高めるために、より多くの作業を依頼すればするほど、つまり、より多くの時間をかけるほど、コストは増えていきます。

 

つまり、特定のお客さんに向けた「サービス」は、お客さんごとに違う個別の目的を果たす、カスタマイズされたものを提供するという前提のもとで、そのために費やす時間に比例して値段が決まるのです。

 

悲劇の元凶は?

サービス業に携わるときの「値段に関する悩み」は、次のいずれかの原因で起こることがほとんどです。

 

1.自分が提供する「サービス」について「モノ」と同じような値段の決め方をしている。

そもそも、サービス提供者自身が、自らのサービスについての値段を誤って決めていることがあります。

本来はお客さんの状況に合わせて個々に、具体的なサービスを提供しなければならないのに、画一的なサービス内容にしてしまい、一律で料金を決めてしまっているケースや、

値引きをすべきでないサービス内容に対して、安易に値引きしているケースがその一例です。

 

一律料金や値引きは、数千・数万という単位のトータルで採算が取れればいい「規格品」を扱うときには有効なこともありますが、個別対応を前提としたサービスには基本的に相容れない考え方です。

提供した価値に見合わない値段となっている可能性、つまり採算割れを起こしているか、あるいは希薄なサービス内容に対して高すぎる料金設定になっている可能性があります。

(個人的には、デザイン業界では「採算割れ」が、自己啓発やスピリチュアル業界では「高すぎる料金設定」が多いように感じています)

 

この場合、基本に立ち戻って、「誰のどのような問題をどうやって解決するサービスなのか?」という問いから、提供しているサービスをあらためて評価して、その価値を正しく伝える方法を見つけることが欠かせません。

「サービス」を「モノ」のように売り込んでいる限り、サービスの価値を本当には理解できていないお客さんを引き寄せてしまうことが避けられないからです。

 

2.「サービス」の値段を「モノ」と同じように捉えているお客さんを相手にしている。

こちらは分かりやすいですし、よくあるケースでもあります。

「無料ホームページ制作サイトならタダのテンプレートがぎょうさんあんのに、なんで◯◯万円も払って他の人に作ってもらわなあかんねん?アホちゃう?」

とか、

「印刷業者が提供している無料テンプレートを使えば早く安く名刺が作れるのに、なんで名刺のデザインにわざわざ◯万円払わないといけないの?バカじゃない?」

というようなご意見は、まさにその一例です。

 

無料テンプレートは、典型的な「規格品」です。

そこには、利用する人たちのビジネスを深く理解したうえで、利用する人たちのビジネス(あるいは、利用する人自身)が持つ価値を最大限に伝えようという意図は、まったく込められていません。

率直に言えば、無料ホームページ業者や印刷業者にとって、そんなことはどうでもいいのです。業者にとっては、利用者が(どんなに醜いデザインであろうとも)ホームページを作ったり、名刺を注文してくれることだけが大切なのです。

 

もしあなたが「サービス」の値段を「モノ」と同じように考えて、とにかく安くしてやろう、値切ってやろう、できることならタダにしてやろう・・・という発想をお持ちなら、それは結果的にあなたが手にする「価値」を減らしてしまうことに他なりません。

なぜなら、サービスの提供者にとって、そのようなタイプの人たちに対する最善の接し方は、「相手にしない」ということ以外にないからです。赤字になることがハッキリしている仕事を好き好んで請け負うサービス提供者はいません。

そして、優秀なサービスの提供者ほど、提供しているサービスの価値を「正しく」伝えて、それを理解してくれる知恵と分別のある一握りの人たちだけに、最高のサービスを提供しています。

 

* * *

 

「サービス業の値段設定」というテーマについては、まだまだ書きたいことがあります。

次回以降、違う切り口から、あらためてこのテーマを掘り下げていきます。